LS Lab 実験報告
日時:6月9日
場所:部室
新入メンバーを迎え、今年度初となる実験を行いました!
「象の歯磨き粉」
「象の歯磨き粉」とは、過酸化水素水の分解を用いて"泡の噴火"のような反応を起こす実験です。必要な試薬が少なく、派手な見た目から演示実験によく使われます。
概要は以下のとおりです。
・濃い過酸化水素水に洗剤などの泡立ちやすい液体を混ぜる。
・ヨウ化カリウムの固体を混合液に溶かす。
・洗剤が酸素を捕らえて泡立つ。
・少量の過酸化水素水から大量の酸素が勢いよく発生する。
この反応は過酸化水素が触媒によって分解する反応です。
過酸化水素(H2O2)は常に酸素の気体と水に分解しており、その反応速度は観察するにはきわめて遅いものです。
過酸化水素が酸素と水に分解する化学式は以下のとおりです。
2H2O2 → 2H2O(l) + O2(g)
ここで、実験にヨウ化カリウム(KI)を用いた場合、触媒はヨウ化物イオン(I-)となります。ヨウ化カリウムは、それ自身が反応によって消費されることなく反応を促進します。ヨウ化物イオンと過酸化水素は下記のように反応します。
H2O2 + I− → H2O + IO−
H2O2 + IO− → H2O + O2 + I−
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2H2O2 → 2H2O(l)+ O2(g) ΔrH° = −196 kJ/mol
この反応はエンタルピーが負の値をとっており発熱反応なので、発生した泡はとても熱くなります。(なので、実験を行う時は火傷をしないように触媒を入れる際に十分に注意します。)
しかし、濃い過酸化水素水を使うのは危険です。(高濃度の過酸化水素水は皮膚を触媒として分解し酸素を発生させ、燃えることがあります。)
そこで、安全な条件下でこの実験を行う際には、3% - 6%のうすい過酸化水素水に触媒としてドライイーストを加える方法があります。
これは、先述の実験と同様に、酸素によって大量の泡が発生しますが、反応が遅くなり、穏やかです。
ドライイーストを用いる場合、触媒となるのはヨウ化カリウムの代わりに、カタラーゼという酵素になります。カタラーゼはほとんどの生物が持つタンパク質です。
ドライイーストとは酵母菌を乾燥させることで休眠状態にした乾燥酵母のことで、この酵母菌はこのカタラーゼを持っています。
カタラーゼはヨウ化カリウムとは違い、過酸化水素が酸素と水に分解する反応の活性化エネルギーを下げることで、触媒として機能します。
今回の実験では3%の過酸化水素水とドライイーストを用いて実験を行いました。
<必要なもの>
オキシドール(3%過酸化水素水)、食器用中性洗剤、ドライイースト、お湯、食用色素(赤、黄)、ペットボトル
<手順>
① オキシドール200mlと洗剤少量、食用色素をペットボトルに入れて混ぜておく。
② ドライイースト5gと沸騰させたお湯30mlをよく混ぜる。
③ ①に②を入れる。
<結果>
濃度の低い過酸化水素水を用いたため、勢いよく吹き出るような反応は見られませんでしたが、ペットボトル内から酸素が泡としてあふれ出る様子を観察することができました。
今回の実験はスーパーや薬局で手に入るものでできる簡単な実験です。皆さんも是非やってみてはいかがでしょうか。
実際にこの実験を行うときは、過酸化水素水に手を触れないように、また、火傷に注意して行ってください。
ご精読ありがとうございました。
LS Lab 3年 市原柚果
コメントをお書きください
(匿名) (日曜日, 19 6月 2016 02:29)
ブログ拝見させていただきました.
とても興味深い物なのですが,1点ほどお聞きしたい事があります.
この実験はどのような事をして,何が起こったのでしょうか?
ちょっと写真だけだと分かりませんでした.
「どのような原理で何が起こったのか」
という,詳しい内容を教えていただくことが出来たら幸いです.
どうかよろしくお願いします.
i (日曜日, 19 6月 2016 09:47)
大変申し訳ありません。
下書きで保存していたつもりがそのまま公開してしまっておりました。
書き加えて投稿しますので、今しばらくお待ち下さいますようお願い致します。
(匿名) (月曜日, 20 6月 2016 14:49)
そうだったのですか.
分かりました.
お忙しいところすみませんがどうかよろしくお願いいたします.
EXD (金曜日, 01 7月 2016 23:55)
とても面白い実験だと思いました。
LS LABさんのblogは今まで物理的な内容が多かったので今回のような実験は新鮮でした。
また、私自身化学分野が苦手なのですが今回の実験を見て、化学に興味が湧きました。時間があれば一人でやってみたいなと思いました。
次回の活動も期待しています。
i (木曜日, 07 7月 2016)
いつもご精読ありがとうございます.
材料も揃えやすく,簡単な実験ですので家庭でも気軽に出来ると思います.
LS Labは今後も物理だけでなく様々な実験を行っていきたいと思いますので,今後ともよろしくお願い致します.